厚生労働省とデータサイトの食品測定結果の重ね合わせ考察

はじめに

みんなのデータサイトでは、全国の有志市民放射能測定室のネットワークで測定した食品や土壌の放射能測定結果を1つのデータベースに記録してもらうことで、データを蓄積し、誰でも簡単に検索し、その結果を閲覧できるように活動してきました。

2017年から、これまでの私たちの測定データと、厚生労働省がまとめてきた各自治体の食品検査結果を比較する試みをスタートしました。

各自治体等が実施し厚生労働省が取りまとめて公表されている食品中の放射能検査結果は、約160万件(2011年〜2017年の累計)にのぼります。
一方、みんなのデータサイトの食品測定結果の件数は、13,000件です。しかし数が少ないからといって、厚労省データに劣るものではありません。

以下、厚労省の測定結果と、みんなのデータサイトの測定結果の特徴を示します。

 

「スクリーニング」のための大まかな検査と「きめ細やか」な検査

行政の検査の目的は食品の基準値(100Bq/kg)超えを判断するスクリーニングに重きが置かれ、下限値が高め(10Bq/kg〜25Bq/kgなど)に設定されているケースが多いです。そのため厚労省のデータは、「不検出」率が高く、必ずしも市場に流通する食品中の放射能レベルを正確に反映していません。

一方、みんなのデータサイトのデータは、測定下限値が0.数ベクレル〜数ベクレルなど、詳しく測定しているケースが多いです。これはできる限り市民の方々の要望にこたえたい、また「本当はどうなのか?」という真理に迫りたいという市民科学的視点の表れでもあります。そのため細かいレベルでの経年変動も捉えることが可能な貴重なデータを提供していることが今回の比較調査で明らかになりました。

 

非流通品が中心か、食卓にのぼる食品をダイレクトに検査できているか

行政の検査では、市場に出回る前の段階や、試験的な操業・栽培品などの測定も数多く行なっています。そこで基準値を超える場合は出荷停止などの措置が取られます。

一方、みんなのデータサイトで測定している食品は、一般市民がスーパー等で入手可能な流通食品(市場調査)や市民が採取し公的検査を経ない食品(天然キノコや山菜類)や知人親戚等からのおすそ分け食品(縁故品)の測定データも蓄積されているため、実際に摂取する可能性のある食品中の放射能レベルを直接反映していると考えられます。

 

食品の種類は数千にのぼりますので、全ての食品を簡単に分析できるわけではありません。

今回は、主食の米として「玄米」、福島県の名産品である「モモ」、汚染が高めな傾向のある「キノコ類」と「山菜」、の4つの食品分類について比較しました。

データ探索期間:2011-2017/12月。 季節物(キノコ、米)があるのでこの区切りで実施。
厚労省データには2011年に山菜データの欠損があります (山菜は時期的に測定に間に合わなかったと思われます)。

 

 

結果の考察

厚労省データに登録されている「もも」検査結果の検出率は6.8%(86/1268件)で大部分がND判定(下限値平均10Bq/kg)となっているため、経年変化はデータ不足ではっきりしません。 一方、みんなのデータサイトのデータを用いたセシウムの経年変化グラフからは明確な減少傾向が読み取れます。 データサイトのデータから基準値を超える「桃」は流通していないがセシウムが僅かに含まれていることがわかります。 これはセシウムの物理的な減衰に加えて桃農家さんの努力の賜物と考えられます。

玄米

データサイトのデータ「玄米」のセシウム経年変化から順調な減少傾向が認められています。

ここ数年間は市場レベルでは「玄米」で最大でも2〜3Bq/kgで推移していることから、白米レベルで40%(最大0.8〜1.2Bq/kg)、炊飯米で10%(最大0.2〜0.3Bq/kg)と推測されます。 厚労省データでは出荷前のスクリーニングデータも記載されているため全体的に濃度が高くなっており、減少傾向も明確ではありません。 濃度の高い玄米については出荷制限や出荷自粛がかけられますので、流通レベルではデータサイトのデータのような様相を示すことになるのかもしれませんが、厚労省データには低濃度まで長時間測定をして探求したデータが極めて少ないので実際の出荷前のレベル推移をはっきり捉えることはできません。

参考:米の年間消費量は59 kg/人なので、放射性セシウムとして最大60 Bq/人・年程度(中央値で25 Bq/人・年)の摂取が見込まれます。

 

 

きのこ類

①食用キノコの年間摂取量調査では、えのきたけ(菌床)>ぶなしめじ(菌床/原木)>しいたけ(菌床/原木)>まいたけ(菌床)>エリンギ(菌床)>キクラゲ(菌床/原木)>なめこ(菌床/原木)>ヒラタケ(菌床/原木)>マツタケ(天然)の順となっており、合計で年間3.4kg/人の摂取量とされています。 一方、流通に乗らず一部の地域や自家消費される天然キノコの摂取量に関しては確かな統計がありません。

②スーパー等で販売されている「きのこ類」は大部分が国産の「栽培きのこ」。キクラゲの95%、マツタケの93%は輸入品。 生産量の多いエノキタケ、ぶなしめじ、まいたけ、エリンギなどが大手きのこ生産会社「ホクト(長野市)・雪国まいたけ(南魚沼市)」で生産されているため長野県と新潟県の2県で6割を占めています。

③上記の生産量の多く摂取の可能性の高い「栽培きのこ」と「天然きのこ」の検査結果をデータサイトのデータから抽出し経年変化を調べました。 その結果、セシウム中央値の経年変化は他と比較して最も緩やかな減少を示しました。 最大値を示したのは天然のきのこや原木で露地栽培されたシイタケやなめこでした。 一方、施設内の管理された環境で栽培されたきのこ類(施設内菌床栽培きのこ)は最大10Bq/kg以下で推移しています。

山菜

①流通量及び消費量が多いフキ、ウド、ワラビ、ゼンマイに加えて春先に流通量が増加するフキノトウ、コゴミ、コシアブラ、タラの芽をデータサイトのデータから抽出し解析を加えました。なお、流通するワラビやゼンマイの加工品の70〜80%は輸入品が使用されています。

 

②「山菜類」のセシウム経年変化の中央値の変動から、セシウム濃度が全体として減少していること、減少の程度はキノコ類より大きいことがわかりました。 各年度の最大値を記録した山菜は福島県、岩手県、宮城県産の天然のコシアブラ、フキノトウ、タラの芽等の春の山菜で、採取地点が異なるためか変動幅が他の食品と比べて大きいのが特徴です。

 

 

まとめ

4つの食品の傾向を分析すると、どの食品も事故後の経年により徐々にセシウムの値は下がってきていることがわかりました。特に桃については、中央値・最大値ともに1ベクレルを下回る結果となりました。
しかし、山菜やきのこ類については、中央値では緩やかに下降線をたどっているものの、最大値については上下があり、引き続き注意が必要な食品です。

  ◆データ分布