土壌

みんなのデータサイトが実施した「〜知ろう!測ろう!つながろう!〜東日本17都県土壌ベクレル測定プロジェクト」は、土壌汚染の濃度を地域で比較して可視化できるよう、マイクロホットスポットなどを測定対象から除いてプロジェクトを実施してきました。

しかし、各所に点在する、放射性物質が高濃度に濃縮される環境「マイクロホットスポット」もまた、無視できるものではありません。
土壌プロジェクトとホットスポット、双方のプロジェクトを同時に推進するちからがみんなのデータサイトではありませんでしたので、どのような場所がホットスポットになりやすいのか? ホットスポットを探し、測定し、基準値を上回る汚染が見つかれば、行政に働きかけて予選や清掃に結びつけるための要請を行う。そうした活動を兼ねてから行なっている「Hotspot Investigators for Truth(ホットスポット インベスティゲーターズ フォー トゥルース)」の方の協力をいただくこととなりました。
HITが測定したデータをデータサイトのウェブサイト上に公開できるよう、環境濃縮のページを開発しました。
みなさんに「どういう場所がホットスポットになりやすいのか」知っていただき、日常生活に役立てていただければと思っています。

ここでは、そのHITの代表である、Sugar Nat さんに 環境濃縮を測定する活動をなぜ始めたのか、その活動内容などについて 手記を寄せていただきました。

プロジェクトのきっかけ

執筆: Hotspot Investigators for Truth(ホットスポット インベスティゲーターズ フォー トゥルース) 代表 Sugar Nat

きっかけは、2012年の初旬頃まで遡ります。 環境省が本格的な除染実地計画を策定し、除染ガイドラインや特措法を作ったのが2012年の1月でした。その後新聞で「0.23μSv/h」という言葉が突如として出てきました。その意味がよくわからなかったので調べてみました。 環境省が定めた『汚染状況重点地域内における環境の汚染状況の調査測定方法にかかるガイドライン(平成25年5月 第2版)』(1-9〜1-10ページ)によると「生活環境を中心に、字(あざ)や街区などの区域単位で判断する。それぞれの区域の複数の測定ポイントで1メートルの高さで空間線量を測定し、その平均値が0.23μSv/hを超える区域について、除染実施計画の策定対象となる」と書かれていました。一自治体の一区画単位で、平均的に1mの高さで0.23μSv/h以下にするということです。その際、「その区域の平均的な線量を把握することが目的なので、樹木の下や側溝等、局所的に線量が高い可能性のある地点は測定地点としない。」との明記がありました。



また、「航空機モニタリング等の既存調査の結果により、計画策定要件に該当する(しない)ことが明らかな区域については、必ずしも追加的な調査測定は必要ありません。」との記載もありました。 つまり、「多くのホットスポットは積極的に管理しなくてもよい」という意味を含んでいたため、私は「ホットスポットが見捨てられる!」と大変な危惧を抱きました。 私の知る限り、国はホットスポットになりやすい場所を説明しているにも関わらず、ホットスポットのデータベースを一切作っていない、このことにも危惧を覚えたのです。      



ホットスポットの基準 ~空間線量基準のあいまいさ~

文科省や環境省がホットスポットとして扱っている基準として「『周りの空間線量を1mで測った値』に加え『ホットスポット直上で測った値が1μSv/h以上』という条件でなければ、対応をしなくてよい」ということがガイドラインに記載されています。0.23μSv/hより高いこの基準を見た時に、多くのホットスポットは対処されずに棄て置かれるであろうということがハッキリわかりました。 その危惧が具体化したのは2012年のことでした。 江戸川区のとある河川敷のホットスポットを一般の方のYoutube投稿で見て気になったので、実際に自分で空間線量を測定しました。その結果をもって江戸川区に除染申請をしたところ、「1mで1μSv/hの値でなければ除染をしません。非常に狭い範囲なので問題ありません。」と言われ、やはり除染にはなりませんでした。その時に、そのホットスポットの土をおおよそ5cmの深さで採取しベクレル測定したところ、2012年8月頃で約34,000Bq/Kgありました。指定廃棄物レベルのものがあったわけですが、対処されず未だにそのホットスポットは残っている状況です。当時その場所の空間線量は、ガイガーカウンターで測定して1mでおおよそ0.5μSv/h、地表で2.5μSv/hくらいだったのです。空間線量基準では、危険が放置されると確証を得ました。



(Special thanks: イラスト 柚木ミサトさん)

私がやれることを始めよう!

このことをきっかけに、2012年から、まずは自分自身でホットスポットの検証を始めることに着手しました。 何年かかけて、Youtubeなどを参考にして気になる場所を測ってみると、濃度の差はあれ見捨てられている場所が点在していることが確認できました。 そうして、この未対応のホットスポットについて地方自治体や国に対処してもらうために、エビデンス(証拠)を取るプロジェクトをやれないかと思い、たくさんの方々の協力を得て2016年から「環境濃縮ベクレル測定プロジェクト」をスタートしました。 このプロジェクトでは、ホットスポットの物質を採取し、「ベクレル値」を測定します。また、相関関係を見るために空間線量「μSv/h値」もその場でしっかりと記録します。ホットスポットの採取面積や深さの記録、“土なのか、苔なのか、黒い物質なのか”というサンプリングした物質を12種類に分けて明記します。またどういった場所がホットスポットになっているかということを記録するため写真も撮ります。可能な限り、周辺の空間線量も測定・記録し、その場所がどの程度周りと比べて空間線量が高いのか、あるいは変化がないのか、も記録します。こうして、積み重ねてきた記録を、このプロジェクトで皆様に見ていただくことができるようになりました。



(Special thanks: イラスト 柚木ミサトさん)

子どもたちのため、ご自分の自治体に除染の協力要請を!

このプロジェクトの目的のひとつは、これをデータベースとして遺しておくこと、もうひとつは見捨てられたホットスポットについてひとつでも多く、出来るだけ丁寧な対処を自治体にお願いして協力して除染を行なっていくことと考えています。どのような特徴の場所がホットスポットになりやすいのか、といったことも、このプロジェクトを通じて皆様に知っていただき、ご自分の住む地域での注意喚起にもこのデータを使って頂けたらと思います。 これまでのホットスポットの実際の空間線量とベクレル測定の結果から、高さ1mでの空間線量の値だけでは極度に汚染の強いホットスポットは見落とされ、放置されてしまうことが改めて確認できました。自治体でやらないこれらの細かな場所の測定は、市民が行い、事実を自治体に報告して除染してもらうという官民の連携が、遠回りのようで結局は汚染を取り除くための近道でした。



このプロジェクトでは、自分自身で幾つかの自治体に測定結果を持ち込み、粘り強く除染などの交渉を行ってきました。幾つかの自治体では、実際に除染をしてもらうことができました。ですが、たくさんの交渉をしてわかったことは、その自治体在住・在勤の住民からの要望の方が耳を傾けてくれやすい、ということです。外部の人間ではなく、その地域の方が声を上げること、このことが自治体を動かす原動力になります。このプロジェクトをきっかけにして、ホットスポット対策について出来るだけ多くの市民の方々とつながり、地元の地方自治体へ協力要請して頂くような広がりができればと思っています。子どもたちの安全のために、手を取り合ってつながっていきましょう。ご協力どうぞよろしくお願いいたします。

Hotspot Investigators for Truth