土壌データの解析

多くの市民測定室で測定に利用しているNaIシンチレーション式検出器では、「分解能」がゲルマニウム半導体検出器と比べて劣り、別核種で近い領域のγ(ガンマ)線ピークを見分けることが非常に困難であるために起こる現象です。
セシウム134(もしくはセシウム137)と、ビスマス214(Bi-214)の領域が重なるため、測定器がその分多く数値を見積もって測定結果を弾き出すのです。

食品には、ビスマス214や鉛などの近い領域の核種が含まれることがほとんどないため、こういった課題はありませんが、土中、水中、植物、木材、建材等の生活環境中のいろいろの物質にはもともと様々な天然の核種が存在するため、そうした核種が多く含まれる検体の場合にこのような問題が起こることがあります。 このような誤検出データについては、各測定室でチェックの上、さらに事務局でもチェックを行なったデータを入力するよう心がけています。 そのうえで、測定結果の表示では、上記のような傾向が見られるデータは、「補正済み検体」と表記し、値を補正してあります。

万が一、比率に疑問があるなどのデータを見つけた場合は、事務局までご連絡いただけますと幸いです。

NaIシンチレーターで土壌や環境試料を極力正確に測るための取り組み

土壌や環境試料(灰など)を測定する際に、より正確に測定をし記録を残すために2016年に行った、検証プロジェクトをご紹介します。
市民測定室であっても、これらの試みを実施することで、正確な測定を行い記録することが可能になっています。
ぜひご参考になさってください。

NaIシンチレーターの測定精度を高めるためのプロジェクト(低濃度検体・高濃度少量検体による測定プロジェクト)

「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」では、ほとんど放射性物質が落ちていない場所から、避難の対象となるような汚染の高い場所まで、様々な場所の採取測定を行なっています。 このため、測定においては極端に低いセシウム値の検体と、極端に高いセシウム値の検体双方を一定程度の精度で測定できていることを確認することが必要です。

みんなのデータサイトでは、2016年に高木仁三郎市民科学基金から助成金を頂き、「NaIシンチレーターによる土壌中放射性セシウム濃度測定の精度向上と検証のための取り組み」として「低濃度・高濃度プロジェクト」を実施しました。

このプロジェクトでは、自分達で非常に放射性セシウム濃度の低い土壌検体と、セシウム濃度が高い土壌検体をつくることから取り組み、それを測定器のメーカーごと・ソフトごとに決まった容器に充填し、各測定室で測定を行いました。そして測定値に差が出るかを確かめ、測定器特性を割り出し、検証を行なって補正係数が必要となるか、必要であればどのような補正となるかを導き出しました。

報告書はこちら

この結果に基づき、数値の補正の対象になるものを精査し、現在の土壌マップや「図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集」に掲載している各地点の数値は補正済みのものです。