原爆と原発について

原爆と原発の違いについて

 
内容 原爆(原子爆弾) 原発(原子力発電所)
原理 燃える(核分裂する)ウランの原子核に中性子を当てる。すると、その原子核は2つに分かれる。この反応が核分裂。この時、膨大な熱が発生する。また、新たに2~3個の中性子ができる。この中性子がさらに別の原子核に当たると、また核分裂が起きてさらに中性子が発生する。
活用の違い 燃える(核分裂する)ウランの割合を100%近くにして、この核分裂反応を制限・制御せずに、連続して起こさせ、大量のエネルギーを瞬時に発生させる。 燃える(核分裂する)ウランの割合を3~5%にして、原子炉の中で制御しながら核分裂を起こさせる。
起こる事象 熱と爆風を地上に作用させるよう、上空で一瞬で完全燃焼させる。半減期の長さに関係なく、短寿命核種も一瞬ですべて放出される。 核分裂によって発生した熱を使って、水を沸騰させ、出てきた蒸気でタービンを回す。タービンに発電機を繋げて、タービンが動くと発電機が動いて電気が起きる(または温排水となって海に放出される)。 核分裂によって、発電に必要なエネルギーを、時間をかけゆっくりと取り出す。
事象(事故)の結果 核分裂をした時の強烈な放射線が、熱線と爆風となって降り注ぎ、その時にできた放射性物質(核分裂生成物=死の灰)が後々までも影響を及ぼす。 原子炉内に閉じ込められていた放射性物質(核分裂生成物=死の灰)が、水蒸気爆発やメルトダウンにより、原子炉外に飛び散り(または沈降し)、放射能雲(プルーム)によって運ばれ広く大気中に拡散される。その時にたまたま雨や雪が降った場所や霧などの気象条件で、大量に放射性物質が降り注ぎ、土壌や植物などに沈着する。
使用する核物質の種類と量 広島型原爆・・・ウラン235:800グラム 長崎型原爆・・・プルトニウム239:6~10キログラム 100万キロワット原発1基/年・・・濃縮ウラン21トン ※天然ウランを濃縮させたもの
原子力安全・保安院(当時)の2011年8月26日発表 (*注1) 原子力安全・保安院は、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会の求めに応じて、東京電力福島第一原子力発電所事故と、広島に投下された原子爆弾で大気中に放出された放射性物質の種類別の量をまとめた資料を公表した。 単純計算すると、原発事故の放出量はセシウム137が原爆の168.5倍、ヨウ素131が2.5倍にあたる。資料は、今年6月に保安院が公表した福島第一原発事故の炉心解析による試算値と、2000年に国連科学委員会がまとめた広島原爆の試算値を放射性物質ごとに一覧にした。半減期が約30年と長いセシウム137で比べると、原発事故が1万5千テラベクレル(テラは1兆)、原爆が89テラベクレル。放射能汚染がそれだけ長期化する可能性を示している。保安院は「原爆は熱線、爆風、中性子線による影響があり、原発事故とは性質が大きく違う。影響を放出量で単純に比較するのは合理的でない」としている。
起きる障害 「急性障害」 原爆では、爆心地に近い人は一度に大量の放射線を浴び、被爆により脱力感や吐き気、嘔吐、発熱、下痢、吐血などの「急性障害」となる。短期間で死亡する人も少なくない。また、爆風や熱線などの影響でやけどによる被害も大きい。 急性障害の他、その後何十年にも渡って、ガンなど、後になってから生じる病気「晩発性障害」が問題となる。 「晩発性障害」 低線量の放射線を長期に渡って浴び被曝することで、白血病、ガンなどを発病したり免疫力が低下する。 初期のヨウ素被曝では、甲状腺ガンを起こすことが知られている。 各地で濃いプルームが生じた3月22日頃までに、屋外に長時間いたり、雨や雪を浴びていないか、風下にいなかったか、汚染した食べ物を口にして内部被ばくしていないかなどが問題となる。
   

(注1)東京電力福島第一原子力発電所から放出された放射性物質と広島原爆とに共通する11の放射性物質について比較

放射性物質 広島原爆 (Bq) 東京電力福島第一原発事故 (Bq) 半減期
セシウム137 89兆 1.5京 30.1671年
ストロンチウム89  1.1京 2,000兆 50.53日
ストロンチウム90 58兆 140兆 28.79年
バリウム140 7.1京 3,200兆 12.752日
ルテニウム103  2.3京 75億 39.26日
ルテニウム106 1,100兆 21億 373.59日
ジルコニウム95 1.4京 17兆 64.032日
セリウム141 2.5京 18兆 32.508日
セリウム144 2,900兆 11兆 284.91日
イットリウム91 1.1京 3.4兆 58.51時間
ヨウ素131 6.3京 16京 8.02070日
    参考資料: http://www.enecho.meti.go.jp/about/faq/009/pdf/45.pdf

出典: 東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び広島に投下された原子爆弾から放出された放射性物質に関する試算値について(平成23年8月26日、経済産業省) 半減期:「平成24年理科年表(丸善出版)」国立天文台(編)


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