放射能の危険性について

「1ミリシーベルトの放射線を浴びる」という意味

「被ばくをする」というのは、具体的には身体の中で何が起こっているのでしょうか。 「1ミリシーベルトの放射線を浴びる」とは「身体全体のひとつひとつの細胞の核に、平均して1本の飛跡が通ること」を意味します。ちなみに人間の身体には、60兆個の細胞があります。 図解すると、次のようになります。



「5ミリシーベルトの放射線を浴びる」意味を図解すると以下のようになります。
放射線が細胞核を通るときに、DNAを傷つけていくので、大きな問題があるのです。



DNAの構造

DNAは、細胞・身体の設計図で、二重のらせん構造になっており、「アデニンとチミン」「グアニンとシトシン」という塩基が対となって組み合わされ構成されています。  



細胞が増えるとき、このDNAの二重らせんがほぐれて同じものがコピーされ、元のDNAを設計図にして、細胞分裂が起こり、増殖していきます。      
ひとつひとつのすべての細胞の中には、同じDNAが入っており、DNAは何回コピーされても、元のDNAと同じものになります。  




放射線によってDNA切断が起こる!

最初に説明したように、「放射線が細胞核を通る時にDNAを傷つけていく」というのは、つまりは、DNAを切断していくということなのです。 二重らせんの内、1本の鎖が切断された時には、修復がされやすいのですが、2本の鎖が切断されてしまうと修復ミスが起こります。するとDNAに変異が起こって、免疫力が低下したり病気を発症したりしてしまいます。 特に、細胞分裂が活発な胎児や乳幼児、成長期の子どもでは、DNA切断による影響は大きくなります。変異の起こったDNAが次々と複製されるためです。このように、子どもたちは放射線による被害を大人より受けやすい(放射線感受性が高い)ため、被ばくから守ることが大変重要になります。



DNA関連図版出典:“Molecular Biology of THE CELL”  

放射線の量と障害との関係

 DNAの損傷が多ければ、そのリスクも増大します。 以下は、放射線の量と障害との関係を表した図です。 日本では、世界的な平均と比較してレントゲンやマンモグラフィー、CT検査など医療被曝の量が非常に高く、身体を治すために必要な放射線か、不必要な高リスクの放射線かを見極める必要があります。 また、自然放射線や飛行機に乗るなど、避けられない放射線被ばくがあるため、出来る限り、人工的に追加される放射線は避けた方が良いことを覚えておきましょう。



放射線核種と子どもに発生する障害確率について

これまでの様々な研究から、放射性物質の種類によって、年齢ごとの発症リスクには差があることが知られて来ています。 とりわけ、放射性ヨウ素(I131など)については、年齢によりその受ける影響が大きいとされています。   下の図は、環境省が作成した「放射線による健康影響に関する統一的な基礎資料(平成26年版)第1章 放射線の基礎知識と健康影響P.93」図です。



出典: 「放射線による健康影響に関する統一的な基礎資料(平成26年版)第1章 放射線の基礎知識と健康影響P.93」 https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-03-06-03.html

この図によると、同じ100Bqの放射性ヨウ素を摂取した場合、大人に比べて3歳児では約100倍の影響があるということを示しています。 福島県内では、事故以降「県民健康調査」として、事故当時18歳以下の子どもたちを対象に甲状腺検査を実施しています。

2017年6月時点で甲状腺がんと診断が確定された子どもは190人を超えています。 福島県以外では国が責任を持った検査・調査体制ができておらず、全体像を把握するに至っていません。 そして国や県民健康調査検討委員会は、この小児甲状腺がんと原発事故との因果関係を未だ認めていません。しかし、上の資料にあるように放射性ヨウ素が子どもに与える放射性感受性の高さを考えると、放射性ヨウ素が流れた広い地域において、甲状腺検査を定期的に実施することが望まれます。