日本の放射能汚染の現状

「海の汚染」において、水産庁データを元に考察を掲載しました。
「川の汚染」についても、同様に考察していきます。 海については、測定に関して詳細なルール・方法が決められていますが、川については海ほどの細かな測定ルールは定められていません。
「河川、湖沼の水産物についても、基準値を超える放射性セシウムが検出された河川等において、出荷制限等が行われており、これらの情報は国及び県のホームページで公表されています。」 自分が釣ってきた魚を食べてもよいか、どのように判断すればよいでしょうか?、という質問に対しても、 「自分が釣ってきた魚を食べてよいか不安な場合には、釣った魚と同じ種類、あるいは同じ場所に生息している魚の検査結果を都道県や水産庁のホームページでご確認ください。もし、釣った場所の近くで基準値を超える放射性セシウムが検出され、出荷が控えられていたり、このような種類の魚を対象とする漁業が行われていない場合には、都道県にご相談ください。国民の方々に安全な水産物を供給するため、関係都道県は、原子力災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)が策定した「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(平成28年3月25日改訂)等に基づき、関係省庁、関係都道県及び関係業界団体等と連携し、前年度に50Bq/kgを超えたことのある水産物及び関係都道県の主要な水産物を中心として、1魚種について原則週1回程度の放射性物質調査を行っています。また、基準値に近い値が検出された場合には、その水産物の調査を強化することとしています。分析結果は、各都道県や水産庁等のホームページでお知らせしています。」 という表記しか見当たらず、川の汚染状況をどこで知ればよいのか、非常にわかりにくくなっています。  

川の出荷制限および採捕(釣りの)自粛状況

水産庁資料では、川の汚染について「内水面」という表現で調査・測定結果を掲載しています。 以下、調査結果です。 2013年3月6日の出荷制限および自粛の状況です。




 注目したいのは、養殖魚種と利根川本流で出荷自粛の要請がかかったものがあることです。 事故直後の汚染の深刻さがわかります。   現在の状況はどうでしょうか? 2017年12月13日の出荷制限および自粛の状況です。





当時の出荷制限が、ほとんど解除されていないことがわかります。解除されたのは、わずかにひとつです。  



川魚の汚染はなぜ高いのか?

川魚の汚染はなぜ高いまま下がらないのでしょうか? それは川魚と海魚の生態に原因があります。



海では漁協や漁港全体で汚染度管理が行なわれますが、川では知らずに釣りを楽しんでしまう恐れがあるので、注意が必要です。

キャッチ&リリースの場合は問題ありませんが、釣って食べることを趣味にしている場合は、河川を管理している県の「採捕自粛情報」を事前にチェックしてください。    

移動する河川の汚染

2018年3月10日に日本科学未来館にて行なわれた「Lesson #3.11プロジェクト」シンポジウム「原発事故から7年、放射能汚染の状況はどこまで改善したのか」において、「陸域はまだ汚染されているのか」というテーマで講演をおこなった筑波大学・アイソトープ環境動態研究センター長の恩田裕一氏によると、河川は放射性セシウムの移行経路となっていると報告されています。

1:河川水系を介した放射性セシウムの移行は移行量・移行距離ともに大きい。

2:放射性セシウムの移動形態
   ・浮遊砂に吸着された「懸濁態」
   ・河川水自体に溶融した状態で運ばれる「溶存態」

要約すると、事故当時に一定程度の汚染があった河川が長く延び、他の河川と合流していれば、汚染も遠方まで運ばれ、運ばれなかった汚染は砂や泥に混ざって河岸の泥はねするような場所に蓄積されているということです。

「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」においても、川岸の土壌は同じ理由で採取ポイントから外しています。
上流域が高汚染されていると濃度低下の速度が遅くなり、人為的な活動により土砂が攪拌されると濃度低下の速度は速まります。

恩田裕一氏によれば、川から海への流出量は3%程度に留まるという解析があるとのことです。

引き続き、川や川魚の汚染に注目していく必要があります。