食品データの解析


みんなのデータサイト 2021年キノコ測定プロジェクトの取り組みについて

 みんなのデータサイトは、東京電力福島第一原子力発電所事故後、全国の放射能測定室(現在28測定室)で測定された食品・土壌・その他環境試料の放射性セシウムの測定結果を、ウエブサイト「みんなのデータサイト」で公開し、検索も可能にしています。また、東日本17都県土壌ベクレル測定プロジェクトの結果をまとめたマップ集を発行して、それら測定結果の解説などを詳しくお知らせしています。

 一般食品に比べて山野の食材の放射能濃度が高い状況にあることから、その実態を明らかにし、無用な被ばくを避けるするため、これまでもプロジェクトに取組んできました。

        2014年春 「しいたけ・たけのこ広範囲測定プロジェクト」
        2019年春 「全国たけのこ測定プロジェクト」
        2020年秋 「17都県キノコ測定プロジェクト」
        2021年春 「タケノコ・山菜放射性セシウム測定プロジェクト」

 福島原発事故から10年目の2021年秋もキノコの山野の汚染状況を明らかにするために「2021キノコ測定プロジェクト」に取組みましたので、測定結果を報告します。



2021年 キノコ測定プロジェクトの概要

期間:

プロジェクトとしては2021年9~11月(データは1~12月分について解析)

調査対象:

放射能汚染地に指定された17都県(*)に生育する野生キノコ
 (*)青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、
    群馬県、新潟県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県

試料採取:

オークションサイト・フリマサイト(以下ネット購入)、道の駅・スーパーなど(以下店頭購入)、自家採取や縁故によって入手
       なお、後藤康之氏の呼びかけによって各地のキノコ同好会の皆さんのご協力も受けました。

プロジェクト参加測定室と放射性セシウム測定装置(8測定室):

 ・あがの市民放射線測定室「あがのラボ」: ATOMTEX社製AT1320A
 ・ HSF市民測定所・深谷: ATOMTEX社製AT1320A
 ・那須希望の砦: ATOMTEX社製AT1320A
 ・未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター(C-ラボ):日立ALOKA社製 CAN-OSP-NAI
 ・日本チェルノブイリ連帯基金-Teamめとば:日立ALOKA社製 CAN-OSP-NAI
 ・はかるなら(奈良・市民放射能測定所):非電化工房製 CSK3i
 ・阪神・市民放射能測定所:非電化工房製 CSK3i
 ・認定NPO法人 ふくしま30年プロジェクト:ゲルマニウム半導体検出器核種分析装置 PGT社製 IGC21

 なお、検出下限値は、検出器の種類・性能・設置場所の環境など測定装置ごとに異なります。また、キノコの供試量や測定時間によって異なります。統計処理では検出下限値未満は、数値を「0」として処理しました。

試料の入手方法



採取したキノコは全て山野に生育する野生キノコ205件で、ネット購入品が81%(167/205件)を占め、次に自家採取・縁故品が12%(24/205件)、道の駅・スーパー等の店頭購入品が7%(14/205件)でした。

野生キノコの放射性セシウム濃度測定結果



生キノコは184件が測定され、放射性セシウムが検出(最小値は0.8 Bq/kg)されたのは77%(142/184件)、最大値は27,381 Bq/kg、中央値は17.0 Bq/kgで、食品基準値100 Bq/kgを超えたものは23%(42/184件)でした。

乾燥キノコは21件が測定され、放射性セシウムは全ての乾燥キノコで検出されました。最大値は2,339 Bq/kg乾(厚生労働省の示す「その他のキノコの乾燥による重量変化率4.0」を基にした生換算値 585 Bq/kg)、中央値は520 Bq/kg乾(同130 Bq/kg)で、食品基準値を超えたものは38%(8/21件)でした。

 これらをまとめると、全キノコ205件のうち、放射性セシウムが検出されたのは80%(163/205件)で、食品基準値を超えたものは24%(50/205件)でした。
乾燥キノコの方が生キノコより食品基準値を超える割合が高い傾向にあり、このことは2020年17都県キノコ測定プロジェクトと同様の傾向でした。

野生・生キノコの種別放射性セシウム濃度



*1 名称は特定されているが件数が「1」のキノコをまとめた。
*2 検出下限値未満は「0.0」とした。
なお、表は測定件数の多いものから記載。測定結果が1件のキノコの放射性セシウム濃度は中央値欄に示した。

生キノコの最大値は名称不明の雑キノコで福島県相馬郡飯舘村産の縁故品で、27,381 Bq/kgでした。
次に高かったのは群馬県産の菌根菌のコウタケで1,241 Bq/kgでした。コウタケは今回測定した生キノコの18%(33/184件)を占め、食品基準値を超えた割合も39%(13/33件)と高い傾向にありました。したがって食品基準を超えた生キノコの中でもコウタケの割合は34%(13/38件)と高い傾向を示しました。
他に、チチタケ、ウラベニホテイシメジ、ムレオオフウセンタケ、サクラシメジ、タマゴタケ、クロカワ、ショウゲンジ、マツタケおよび「名称特定単品キノコ」欄にまとめたために表にないアカモミタケに、食品基準値超えがみられました。
食品基準値を超えた生キノコは全て菌根菌でした。

食品基準値を超えた野生の生キノコ一覧



食品基準値を超えたキノコの採取地について、出荷制限の有無を確認しました(〇:出荷規制有り、 X:出荷規制無し、?:採取地が県名までで市町村名が不明のため出荷規制の確認が出来ない)。

食品基準値を超えたものは、明らかに出荷制限のある地域からのものが24%(9/38件)、出荷規制無しの地域からのものが21% (8/38件)、そして、採取地詳細不明の地域からのものが55% (21/38件)でした。

自家採取や縁故品の食品基準値超えは、「測って判断」を基本とする自主測定の一貫であると考えられますが、ネット購入で出荷制限ありの地域からの出荷は許されません。

群馬県吾妻郡嬬恋村では野生キノコに出荷制限が出されています。そこに生育する野生キノコの採取と販売は禁止されていることが徹底されていないためでしょうか、チチタケが978 Bq/kgと大きく食品基準値を超えていました。

また、同じくネット購入で出荷制限無しの地域からの出荷は、出店者が出荷時の放射能検査を自主的に実施している可能性が少ないことを示しています。
もちろん行政もモニタリングを怠っているということです。

当プロジェクトでは、こうした事例に遭遇した時は、測定結果が出た段階で行政に対応を求める様にしています。

野生の生キノコの採取地別放射性セシウム濃度



放射能汚染地に指定された17都県のうち、埼玉県・神奈川県・静岡県以外の14都県の試料を採取しました。14都県の全ての採取地で生キノコに放射性セシウムの検出がみられ、食品基準値を超えたのは10都県21%(38/184件)でした。中でも、群馬県は検出率および食品基準超過率ともに100%でした。

食品基準値を超えた野生の生キノコの採取地




食品基準値を超えた生キノコの最大値は27,381 Bq/㎏の福島県産です。
なお、中央値が542 Bq/kgの栃木県、407 Bq/kgの福島県、309 Bq/kgの群馬県、298 Bq/kgの山形県などに高い傾向がみられました。

野生・乾燥キノコの放射性セシウム濃度測定結果



採取した乾燥キノコは4種類で、全て菌根菌でした。
乾燥キノコの80%(17/21件)はコウタケで、これらコウタケの47%(8/17件)は食品基準値を超えており、最大値は2,339 Bq/kg乾(生換算値585 Bq/kg)でした。その他のキノコに基準値超えはありませんでした。

なお、試料の採取は全てネット購入で、採取地の詳細不明が多かったです。
2件のみ町名が明らかだったコウタケはいずれも福島県南会津町産で、出荷制限のない地域での基準値超えが明らかとなりました。

天然乾燥キノコの採取地別放射性セシウム濃度




乾燥キノコを採取した5都県のうち、食品基準値超えが多かったのは、多い順に67%の同率で福島県(4/6件)・岩手県(2/3件)、次に同じく50%の同率で千葉県(1/2件)・東京都(1/件2)でした。
長野県は採取件数が7件と多かったものの基準値超えはありませんでした。したがって、長野県産は生キノコでは食品基準値超えがありましたが、乾燥キノコでの基準値超えはありませんでした。
一方、千葉県産は生キノコでは食品基準値超えがありませんでしたが、乾燥品では基準値超えがありました。検体数が少ないための結果だと考えられます。



2021年キノコプロジェクト 測定結果のまとめ

  • 放射能汚染地に指定された17都県のうち、埼玉県・神奈川県・静岡県を除く14都県の試料を採取しました。14都県の全ての採取地で放射性セシウムの検出がみられました。食品基準値を超えるキノコが確認されたのは14都県のうち秋田県・宮城県・茨城県を除く11都県(青森県、岩手県、山形県、福島県、群馬県、栃木県、千葉県、東京都、山梨県、新潟県、長野県)でした。
  • 全測定キノコ205件のうち、放射性セシウムが検出されたのは80%で、食品基準値100 Bq/kgを超えたものは24%でした。最高値は福島県飯館村の雑キノコで27,381 Bq/kgでした。コウタケは生33件と乾燥17件で合計50件でしたが、最高値は生1,241 Bq/kg、乾燥2,339 Bq/kg(生換算値585 Bq/kg)で高い傾向にありました。他に高い傾向にあったのは、チチタケ・ムレオオフウセンタケ・ウラベニホテイシメジ・クロカワ・ショウゲンジなどでした。
  • 食品基準値超えはすべて菌根菌でした。食品基準値超過率は生キノコ23%、乾燥キノコ38%で、乾燥キノコの方が高い傾向にあり、このことは2020キノコ測定プロジェクトと同様の傾向でした。特に、ネット購入において、明らかに出荷制限のある地域からのものは24%で、2020年ネット購入の22%とほぼ同じ食品基準値超過率でした。なお、採取地詳細不明の地域からのものが増えており、採取地詳細情報への注意が必要です。

さいごに

 野生キノコの放射性セシウム濃度は、半減期の短いセシウム-134が数%にまで物理的に減衰した後も、半減期30年のセシウム-137は原発事故による放出時の80%が環境中に残存し、とりわけ放射性プルームによって拡散したままの山野の分布状況を反映していました。
野生キノコを好物とする日本人は多いです。売り手はもちろん、消費者も野生キノコの汚染状況には注意を払い、疑わしきは「測る」を基本にしていただくのが良いと思います。無用な被ばくは避けましょう。お近くの市民放射能測定所にご相談ください。



印刷したい方へ


ファイルを開く

印刷用のPDFです。 一部の説明文が省略されておりますが、ほぼ上記の内容が網羅されているパワーポイントです。

2021年みんなのデータサイトキノコプロジェクト チーム(解析および文責 大沼章子(Cラボ))