食品データの解析

1. はじめに 

東京電力福島第一原発事故から10年が経過しました。事故炉から放出された放射性セシウムは、放射性プルームによって拡散し、降雨等によって地上に降下し、特に粘土質の土壌に吸着し、山野での移動性が低いことが知られています。

みんなのデータサイトでは、土壌の放射能汚染状況を明らかにするために、2014年から東日本土壌ベクレル測定プロジェクトに取り組み、その成果を2018年11月に「図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集」(現在は増補版)として出版しました(https://minnanods.net/map-book/)。

食品に関しては、日常的な測定と並行して、2014年に「しいたけ・たけのこ広範囲測定プロジェクト」を実施しました(https://minnanods.net/analyze/food-data/2014mushroombambooshoot.html)。

また、8年が経過した2019年春には、一般食品に比べて山野の食材の放射能濃度が依然として高い状況にあるとして、野生種の中でも幅広く食されているタケノコについて、再度全国規模の調査をしました(https://minnanods.net/analyze/food-data/entry-1616.html)。

今春、依然として山野草や野生獣肉に放射性セシウムの検出が多くみられるため、タケノコと山菜について、10年目の放射能汚染状況を知るために、このプロジェクトを立ち上げました。

2. 調査概要

1)プロジェクト参加測定室[略記号]

阪神・市民放射能測定所[a]、未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター(C-ラボ)[b]、日本チェルノブイリ連帯基金-Teamめとば[c]、あがの市民放射線測定室「あがのラボ」[d]、東林間放射能測定室[e]、HSF市民測定所・深谷[f]、森の測定室 滑川[g]、NPO法人 放射線測定室アスナロ[h]、那須希望の砦[i]、みんなの放射線測定室「てとてと」[j]、認定NPO法人 ふくしま30年プロジェクト[k]、さっぽろ市民放射能測定所 はか~る・さっぽろ[l]、計12測定室

2)調査期間

試料採取:2021年3月15日から6月6日
試料測定:2021年3月15日から6月10日

3)採取方法

プロジェクト開始時点では、タケノコも山菜も、自家採取を含む縁故品・市販品(ネット通販および店頭)などを、放射能汚染を懸念された17都県について各々4件づつ採取することを原則にしました。しかしながら、計画通りに採取できない都県もあった一方、測定室独自の取り組みとして計画数以上の試料採取ができた品目もあり、ここではそれらを含めて、プロジェクト試料としました。
試料情報として、品名、採取地(採取地住所、もしくは当該県・市町村名、購入店名と所在地など)・採取日時・採取者名などを記録しました。
採取された試料は、タケノコは97件(タケノコ85件、ネマガリダケ12件)、山菜は193件(コシアブラ94件、ワラビ15件、タラノメ43件、コゴミ14件、サンショ葉4件、フキノトウ7件、フキ4件、その他山菜11品目12件)でした。

4)試料の前処理

タケノコは先端部分に放射性セシウムが集まりやすいことから、洗浄して水分を除去した後、外皮をむき、姫皮部分も含めた可食部を縦割りにして、細かく刻んで測定容器に詰めました。山菜は、洗浄後水分を除去し、可食部のみを細かく刻んで測定容器に詰めました。

測定器[使用する測定室の略記号]

ヨウ化ナトリウムシンチレーション検出器核種分析装置(NaI):非電化工房製 CSK-3i[a]、ATOMTEX社製AT1320A[d・e・f・g・i・l]、日立ALOKA社製 CAN-OSP-NAI[b・c]、EMFジャパン製EMF211[j]、応用光研製 FNF-401[h]
ゲルマニウム半導体検出器核種分析装置(Ge):PGT社製 NIGC16190SD[k]

検出下限値

検出下限値は、検出器の種類・性能・設置場所の環境(バックグランド)など測定装置ごとに異なります。また、測定時の供試量や計測時間によって異なります。したがって、測定試料ごとに異なります。この調査における検出下限値を表1に示しました。なお、以下に述べる測定結果および考察などでは、検出下限値未満を表中では「0」と記載し、統計計算では数値を「0」として処理しました。また、文中では「ND」と記載しています。



*放射性セシウムは、セシウム-137とセシウム-134の合算値です。したがって、放射性セシウムの検出下限値はセシウム-137とセシウム-134各々の検出下限値を元に算出されます。しかし、セシウム-134は半減期が2年と短いため、現在(2021年6月)は2011年の原発事故時に比べて3%にまで減衰し、半減期が30年のセシウムー137の4%以下に過ぎないため、セシウム-137の検出下限値を放射性セシウムの検出下限値として記載しました。

3.プロジェクトの結果と考察

2021放射性セシウム17都県測定プロジェクトの測定結果を、タケノコは図1-1、山菜は図1-2のように日本地図に採取地をプロットし、各プロットの色を測定結果の濃度範囲で10段階に色分けして示しました(各ポイントをクリックしていただくと、調査結果の詳細をご覧いただけます。なお、採取地情報が県名のみの場合は当該県の県庁所在地等にプロットしました)。

図1-1

図1-2

また、測定結果の集計をタケノコは表2-1、山菜は表2-2に示しました。




3-1)タケノコについて

ここでは、タケノコの種類不明のものが半分以上含まれていたことや種類毎の試料数にバラツキが大きかったこと、またネマガリダケは生息域が寒冷地に限られることなどの地域性もあり、大きくタケノコとネマガリダケに分けて解析しました。
種類不明のタケノコは55件、種類が特定されたものは5種類で、孟宗竹25件、淡竹4件、布袋竹と雷竹各1件、ネマガリダケ12件が測定されました。表2-1では、全タケノコは97件ですが、ネマガリダケ(12件)とその他のタケノコ(85件)に分けて集計しました。

また、全タケノコの採取法の内訳は図2-1に円グラフで示しました。



種類別にみると、タケノコは検出下限値0.4~9.3 Bq/kgで検出されたものが39件で検出率は46%(39/85)でした。基準値超過は4件で超過率は5%(4/85)でした。最大値は226 Bq/kgで、中央値は検出下限値未満(以下、ND)でした。食品の放射性セシウムの基準値100Bq/kgを超過した(以下、基準値超過)タケノコ4件はいずれも縁故品であり、ネット通販や店頭販売での基準値超過はありませんでした。
ネマガリダケについては、検出下限値0.5~6.3 Bq/kgで検出されたものが3件で検出率は25%(3/12)でした。最大値は2.1 Bq/kgで基準値超過はありませんでした。
したがって、全タケノコでは、検出下限値0.4~9.3 Bq/kgで検出されたものが42件で検出率は 43%(42/97)でした。最大値は226 Bq/kg、中央値はNDでした。基準値超過は4件で超過率は4%(4/97)でした。

表3-1に、タケノコの産地県別集計表をタケノコの品種とともに示しました。試料採取ができなかった東京都を除いた16県のうち検出がみられたのは、半分の8県(福島県、栃木県、神奈川県、岩手県、宮城県、群馬県、山形県、茨城県)でした。このうち、中央値で検出下限値を超えていたのは福島県、栃木県、神奈川県、岩手県の4県で比較的検出濃度が高いことが明らかです。また、基準値超過のタケノコ4件はいずれも栃木県産でした。



表4-1に基準値超過のタケノコとその産地および出荷制限の有無を示しました。基準値超過のタケノコの最大値は栃木県那須塩原市産の226 Bq/kgでした。他の基準値超過のタケノコは全て栃木県那須郡那須町でした。現在、栃木県内のタケノコには、北部の5市(那須郡那須町・那須塩原市・大田原市・矢板市・日光市)に出荷制限が出されています。これら基準値超過のタケノコはいずれも縁故品ですが、必ず測ってから利用するようにして下さい。この地域では採取された30%のタケノコが基準値超過している可能性があります。



3-2)山菜について

山菜の採取法の内訳を図2-2に円グラフで示しました。



タケノコと比べて、ネット通販による採取が多いことが分かります。表2-2に示したように、最も多く試料採取されたのはコシアブラの94件で、他にタラノメ43件、ワラビ15件、コゴミ14件、フキノトウ7件、サンショ葉とフキ各4件およびその他の山菜欄には11種類12件を示し、合計193件でした。山菜は多品種にわたって採取されており、種類別の件数を図3にも円グラフで示しました。



種類別にみると、コシアブラは、検出下限値1.1~19.1 Bq/kgで検出されたものが83件で検出率は88%(83/94)でした。最大値は696 Bq/kgで、中央値は36.8 Bq/kgでした。基準値超過は30件で超過率は32%(30/94)でした。
基準値超過のコシアブラ30件のうち77%(23/30)はネット通販による採取で、残り23%(7/30)は縁故品でした。

みんなのデータサイトの昨秋の取り組み(2020秋ネット購入キノコプロジェクト、(https://minnanods.net/analyze/food-data/entry-1620.html)でも、明らかにしてきましたが、ネット通販による顔の見えない取引には注意が必要であること、放射能濃度を測って出品することの必要性が徹底されていません。更なる行政・ネット店主・ネット出品者への改善の申し入れと消費者への注意喚起が必要なことが明らかになりました。

タラノメは、検出下限値0.7~18.3 Bq/kgで検出されたものが18件で検出率は42%(18/42)でした。
最大値は108 Bq/kgで、中央値はNDでした。基準値超過は1件で超過率は2%(1/43)でした。
基準値超過のタラノメはネット通販による採取でした。

サンショ葉は、検出下限値9.2~21.8 Bq/kgで検出されたものが1件で検出率は25%(1/4)でした。
最大値は218 Bq/kgで、中央値はNDでした。
基準値超過は1件で超過率は25%(1/4)でした。
基準値超過のサンショ葉は店舗による採取でした。

フキノトウは、検出下限値1.2~22.9 Bq/kgで検出されたものが1件で検出率は14%(1/7)でした。
最大値は239 Bq/kgで、中央値はNDでした。
基準値超過のフキノトウは縁故品でした。

ワラビは、検出下限値0.5~11.8 Bq/kgで検出されたものが7件で検出率は47%(7/15)でした。
最大値は93.0 Bq/kgで、中央値はNDでした。
基準値超過はありませんでした。

コゴミは、検出下限値1.3~19.4 Bq/kgで検出されたものが4件で検出率は29%(4/14)でした。
最大値は11.2 Bq/kgで、中央値はNDでした。
基準値超過はありませんでした。

フキは、検出下限値3.1~6.8 Bq/kgで全てNDでした。

その他山菜には、ゼンマイ2件、イタドリ・赤コゴミ・ハリギリ・ノビル・イタドリ・山ワサビ・葉ワサビ・山ウド・モミジガサの各1件、合計12件をまとめて集計しました。
検出下限値0.8~12.0 Bq/kgで検出されたものが6件で検出率は50%(6/12)でした。
最大値は82.2 Bq/kgで、中央値は1.6 Bq/kgでした。基準値超過はありませんでした。

したがって、山菜についてまとめると、検出下限値0.5~22.9 Bq/kgで検出されたものが120件で検出率は62%(120/193)でした。
最大値は696 Bq/kgで、中央値は5.8 Bq/kgでした。
基準値超過は33件で超過率は17%(33/193)でした。

表3-2に、山菜の産地県別集計を山菜の種類とともに示しました。
試料採取ができなかった東京都と神奈川県を除いた15県のうち全ての試料がNDだったのは、3県(千葉県、山梨県、埼玉県)のみでした。

タケノコと山菜を比べると、検出状況については、8県にわたって検出がみられたタケノコに比べて、山菜は12県にわたって検出がみられました。

検出率と基準値超過率は、タケノコで43%と4%、山菜は62%と17%でした。
これら検出状況の違いは、大きくは生育土壌からの放射性セシウムの取り込みやすさ(=種類ごとの移行係数)やその生育域における放射性セシウムの蓄積量と土質の違いによるものと思われます。



表4-2に基準値超過の山菜とその産地および出荷制限の有無を示しました。基準値超過の山菜は、ほとんどがコシアブラで91%(30/33)を占め、その最大値は栃木県那須郡那須町産の696 Bq/kgでした。コシアブラ以外の残り3件は、福島県双葉郡葛尾村産フキノトウで239 Bq/kg、栃木県那須塩原市産サンショ葉で218 Bq/kg、宮城県産タラノメで108 Bq/kgでした。



図4に基準値超過した山菜の産地と件数を円グラフで示しました。栃木県(5件)、宮城県(9件)、福島県(2件)、群馬県(2件)、長野県(4件)、山形県(6件)、茨城県(3件)、岩手県(2件)の8県にわたって基準値超過の地域が存在することが明らかです。



採取法別に、これらの地域での出荷制限の有無をみていきましょう。

基準値超過の33件中ネット通販品は24件ですが、出荷制限がかかっている地域からのものが6件で25%(6/24)でした。
また、出荷制限のない地域からのものは2件で8.3%(2/24)でした。
出荷制限のある地域からの基準値超過品の販売は、ネット通販会社および販売者(出店者)に明らかな規制違反があり、また、行政の監視の甘さが指摘されます。
出荷制限のない地域からの販売品が基準値超過していたことでは、行政が地域の放射能汚染状況を住民に周知徹底し、山野草の放射性セシウム濃度の継続的な監視・情報提供を徹底する必要があり、同様に行政の監視の甘さが指摘されます。もちろん、販売者も放射能汚染の懸念のある地域からの山野草については必ず測ってから販売することを心がける必要があります。

なお、基準値超過のサンショ葉は店頭品でした。
出荷制限ありの栃木県那須塩原市のものを地元スーパーで販売していたという事実があり、出荷制限ありの地域からのネット通販品と同様なことが指摘されます。

その他、縁故品が8件で出荷制限有の地域のものが6件で75%(6/8)、出荷制限なしの地域のものが2件で25%(2/8)でした。
縁故品はいずれも産地の市町村名まで確認できています。

一方、ネット通販品16件の66.7%(16/24)は県名までの確認しかできず、出荷制限の有無を特定することはできませんでした。

いずれにしても、行政は地域の放射能汚染状況を詳細に把握し、出荷制限等の的確かつ迅速な行政措置等を地域住民に周知徹底することが必要です。
また、地域住民は、販売者であっても自家消費者であっても、地域の放射能汚染状況の詳細の把握に努め、利用にあたっては放射能を測って利用することを心がけていただきたいです。

4 これまでの測定値との比較

みんなのデータサイトは、参加市民放射能測定室の測定データを統一フォーマットで集約し、データベースを構築しています。
そのデータベースからタケノコと山菜について、これまでの測定値を抽出しました。

図5-1にタケノコ、図5-2に山菜をプロットしました。図の右側のオレンジ色のプロットが今回の2021プロジェクトの測定値です。この図から、2012年から2021年までの10年間の放射性セシウムの濃度推移が読み取れます。タケノコも山菜も、バラツキはありますが、福島原発事故から初期の5年後頃までは半減期の短い放射性セシウム成分(Cs-134)の寄与による僅かな減少が認められるが、その後の6年ほどはほとんど変わっておらず、ほぼ同じ濃度レベルにあることが明らかです。つまりタケノコと山菜中の放射性セシウム濃度は下げ止まり状態です。
比較参考のため挿入図には、半減期の長い放射性セシウム成分(Cs-137)の減衰の様子を描き入れてあります。
※なお、減衰曲線の初期値には意味はなく、対数グラフ上では減衰の割合を「傾き」として表現しています。



みんなのデータサイトでは、これまでも、山野草や野生の獣肉などについて、放射性セシウム濃度が高濃度に検出される状況が長期間継続的であることを強調してきました。
今回も同様な状況にあることが確認されました。

5.まとめ

2021タケノコ・山菜の17都県放射性セシウム測定プロジェクトを実施しました。

タケノコは97件測定し、検出下限値以上だったのは42件(43%)でした。
最大値は栃木県那須塩原市産の226 Bq/kg、中央値は検出下限値未満 、食品の基準値(100 Bq/kg)超過は全て栃木県産の4件(4%)でした。

山菜は193件測定し、検出下限値以上だったのは120件(62%)でした。
最大値は栃木県那須郡那須町産の696 Bq/kg、中央値は5.8 Bq/kg、食品の基準値超過は33件(17%)でした。
   
タケノコ・山菜の最大値を示したのは、いずれも縁故品でしたが、ともに出荷制限のある地域からの基準値超過品でした。
ネット通販や店頭販売などの流通品にも、同様に、出荷制限の有無にかかわらず食品の基準値超過がありました。

山野の食品の放射性セシウム汚染はこの先何十年と長く続きます。
行政も住民も、ともに地域の放射能汚染状況の把握に務め、適切な措置が周知徹底されること、また、山野の食品を利用する際には、「測って判断」を基本としていただきたいと思います。         

(文責:C-ラボ 大沼章子)