東日本土壌ベクレル測定プロジェクト 第1期報告会 レポート(11/22開催)

20151122日(日)東京南部労政会館にて「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト 第1期報告会」を開催しました。
参加者は会場が満員となる約60名でした。以下当日の概要です。

□第一期活動報告と第二期の課題
国がやらないなら市民でやるしかない!〜プロジェクトの成り立ち
はじめに、事務局長の石丸からの挨拶。
ベラルーシではチェルノブイリ事故後、国家を挙げて土壌測定を行い、住民の避難基準などにも使われてきた。しかし日本では航空サーベイなど空間線量でのマップが主になっており土壌ベクレル測定は細かく行われず公表もほとんどされていない。そこで、市民が力を合わせてベクレル測定して地図を作ることにしたというプロジェクトの意義を紹介。



市民の力がマップやグラフ表示で「形」に。課題は「空白域」
次に、この日までに入力された約1,000検体分の土壌測定結果について、ウェブ上で閲覧可能となった、汚染度別に地点が色分けされたマップやグラフ表示システムを披露しながら解説した。既に採取が済んだ地域もあれば、まだ採取が進まない地点もあり、これからの1年で、この「データの空白域」にどのようにアプローチして地図を完成させていくかが課題。事故から4〜5年経ち、関心の薄れた放射能汚染を冷静にしっかりとデータで捉えることが重要。


■更なる採取協力のために「分かりやすい手引きを作成」
初めて土壌の採取をする人々に分かりやすいようにと作成した、コミック版説明書「虎の巻」や、動画「土壌採取ビデオ」を紹介。https://www.youtube.com/watch?v=OLtwStOqk2w
*「虎の巻」はウェブからのお申し込みで頒布もしています。





虎の巻はこちらから入手できます→http://www.minnanods.net/soil/toranomaki.html


■「マイクロホットスポット」について

みんなのデータサイトとしては、現在、局所的に放射能が濃縮された地点「特異点(マイクロホットスポット)」は、今回の土壌プロジェクトからは除外している。しかし、マイクロホットスポットも無視できない存在である。そのためデータの表示や特異点プロジェクトを別途模索中であり、今回、すでに特異点の可視化に取り組まれているsuger nutさんをゲストに迎え、活動内容を紹介していただいた。データサイトとしての取り組み方や協働については引き続き協議を続ける。



□各地域の取り組み発表
■「山梨県100カ所測定で見えた地形との関わり」(町田はかるーむ)川野さん・瀬尾さん
山梨県担当。7月〜10月まで100ポイントの採取測定を行った。
南北東西80kmの地勢を網羅すべく25市町をリストして落ちが無いよう割り振った。東京や福島から移住して農業をしている人、地元の方達など人的ネットワークがうまくいった。
測定の結果わかったことは、地形(川や湖など)によって放射能が流れ込んだルートがハッキリ見えたこと。逆に山が遮ってくれたお陰でほとんどセシウムが到達しなかった地域もある。
地形による数値の差は普遍的とは言えないが、部分的には山梨県以外でも様々な場所で同じようなことが起こっている可能性があると考察した。

     資料:「はかるーむ」が測定した山梨県土壌調査結果より一部抜粋



■「自分たちの手で自分たちの地域を丁寧に測定」森の測定室 滑川 (主山さん・根岸さん)
今現在108カ所の埼玉県内の測定を終え手作りマップがある。
特筆すべきは熊谷市・深谷市。「放射能から子どもを守る会」などが3キロメッシュで1区画ずつ測定した。地域ごとに自分たちが心配だからという思いで、採取して持ってきてもらうことを大切にした。エリアごとに他の市民グループや生協などと連携した。活動・測定資金も自分たちで助成金を獲得し、他の地域以上にきめ細かく測定できている。今後、南部や東部に広げていきたい。
森の測定室では保育園、幼稚園8園が会員になって食材の測定等をしている。土壌プロジェクトもその園の1つがきっかけでスタートした。コミュニティカフェを最近併設し、人と人とがつながって地域をつなげたいと考えている。原発事故の原因の1つは当事者意識の欠如だと思うので、知る機会を増やしたい。


        資料:3km四方に区切って採取地点を決めて測定した深谷市マップ



■「『楽しみ』とあわせて活動を展開」神奈川エリア(事務局:小山さん)
神奈川スタイルは、採取講習会だけでなく、「楽しみ」と組み合わせて開催してきた。平日の午前中に講習会をして、終了後においしいランチを食べながら交流し次の企画を練るなど(座間講習会)。
東林間では講習会+カレーカンパ付ランチ、食後に実際に採取した土を測定器に詰め、測定する所も見学してもらう企画を実施した。
また「小さき声のカノン」(鎌仲ひとみ監督)の上映会でのトークショーでは、石丸事務局長が、鎌仲監督、満田夏花さんと「被曝・測定・避難」のテーマでトークを繰り広げ、土壌プロジェクトの案内をした。戸塚の6月の採取講習会と同じく戸塚で行われたこのカノンの上映会から神奈川県内で機運が高まり、神奈川土壌プロジェクトサポートグループのメンバーや参加者が土壌講習会を主催してくれるようになった。





■「宮城での取り組みと苦労」 小さき花 市民の放射能測定室(石森さん)
自分で採取するケースも多い。他の人に採取をお願いする時困る点は、マニュアルを配っても「難しいね!」となってしまうこと。解決するために現地に出向いて、一度一緒に採取をやってみることで対応してきた。丸森町は、既に政府の補償を受けているので結果を公開して良いと許可はもらったが、実際はそう簡単ではない。新住民は借地の人が多く、風評を気にする大家から「いつ出て行ってもらっても構わない」などと言われ、測定を断念するケースもあった。





■「先例となったプロジェクトいわて」かねがさき放射能市民測定室 (菅原さん(石丸代読))
「特異点を避けて5センチの深さで採取する」という、現在の「みんなのデータサイト土壌プロジェクト」のお手本となったのが「土壌調査プロジェクト・いわて」。現地で中心となったのが菅原さん。20122013年にかけて小さな子どもを持つお母さん達が中心となって、日常的に生活する場所の汚染状況を測ろうとスタートした。事前に役所に採取許可を取り、316カ所を採取・測定。結果をもって岩手県に陳情を行った。また各自治体へも結果を報告した。測定結果は紙の地図に印刷し販売している。*みんなのデータサイトとしての「土壌プロジェクト」にも様々な協力やアドバイスをいただいている。

資料:「土壌調査プロジェクト・いわて」が作成した地図

☆いわての地図はこちらから入手できます→http://www.minnanods.net/support/goods.html


■「自治体へは直接出向くのがポイント」東葛エリア(山本さん)・東林間放射能測定室(高岡さん) 
千葉県鎌ヶ谷市を中心に、多くの自治体に事前交渉し、採取を展開している。もともと公園の空間線量を測定しマップにすることを行っていた。自治体との交渉では、土壌プロジェクトのホームページを印刷し、土壌許可申請のフォーマットを一緒に持参している。ホットスポットは採取しないことを説明し、許可が出た。その成功事例を持って周辺自治体へ範囲を広げている。山本さん+その自治体の住民というセットで活動している。隣の自治体の結果を持ち、電話でなく、直接会いにいくのがポイント。2〜3回は通うことになる。平日に役所に行くのが難しい人は自宅の庭を測定すると良い(みんなのデータサイトの土壌プロジェクトでは、詳細住所は特定・公表されない)。松戸の公園は除染が進み、数値が低めだったので,個人宅との比較検討が必要と考えている。
(高岡さん)相模原は、教育委員会立ち会いのもとという条件で校内の測定もOKが出た。校内敷地で手つかずの土壌があれば採取・測定することができる。現在実績は1校。こうした良い例を寄せ集め、他の地域への広がりに活用していただければ。





■「丁寧な講習会で採取モチベーションをアップ」静岡(名古屋C-ラボ 大沼さん)
現在C-ラボでは静岡の測定を引き受けている。事前に、文科省の空間線量を元にした地図や航空機モニタリングの地図を見てみたが、肝心な汚染はほとんどわからない。静岡大学の人達がくまなく県内を歩いた空間線量計マップでは、伊豆半島の山脈の手前にセシウムが落ちたことが分かるマップがある。こうしたマップを測定講習会で皆さんに見せ、活動への関心を高めてもらっている。三島から御殿場、函南、伊東、浜松等で講習会をし、採取が進んでいる。生活クラブ生協にも声をかけ、他の地域の採取も進む計画。キーパーソンを見つけることが肝。





□グループワーキング
現在みんなのデータサイト上で公開しているマップも、1つ1つが市民の皆様の努力の結果。今後、今の空白域を測っていくためにヒントやアイデア、知人のご紹介等をお願いしたい。その場で空白域を示したマップを掲載し、心当たりの知人やつながりについて書き込みをしていただいた。その後グループに分かれ、各テーマに沿った討論を深めた。特に活動を継続するための資金の問題と、現在採取する人がいない「空白域」の採取活動をどう進めるかが課題。具体的な方策についての意見交換、発表を行った。



〜お知らせ〜
2016327日(日)午後慶応三田キャンパスにて、土壌プロジェクトの第2回報告イベントを予定しています。
詳細は、当ブログにて随時ご案内いたします。


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