市民測定室のつくりかた|現場ノート Vol.7 放射線測定と放射能測定の違い

放射線測定 vs 放射能測定


「放射線測定」はその場の放射線の強さ(空間線量率μSv/h)・汚染の有無(計数率cpm)・個人の被ばく量(μSv)をリアルタイムで把握することが目的の測定で、測定対象・目的により用いられる機器が異なります。
空間線量率測定の目的は、細かい数字の正確さではなく大体の汚染の傾向を素早く知ることです。
0.08 μSv/h、0.25 μSv/hのように、現場での相対的な違いや線量率の把握が重視されることがあります。
もちろん線量計にも校正は重要ですが、現場測定では「すぐ結果が出る」「傾向を見る」「異常を見つける」という役割が大きいのです。

一方、「放射能測定」は食品や土壌、飲料水等の物質の中に含まれる放射性物質の量を、放射能濃度(Bq/kg、Bq/l)として定量的に求める測定で、核種分析が可能なゲルマニウム半導体検出器やNaI(Tl)ベクレルモニターで実施されます。
食品1 kgあたり何Bqか、食品基準値と比べてどうか、不検出といえる下限値はいくらか、Cs-134とCs-137を分けて見ているかが問われ、数値の由来がより厳しく問われるのです。

食品中の放射能測定では、同じ食品を測ったとき、測定者や測定器が変わっても、統計的に矛盾しない範囲で同じ放射能濃度が得られることが求められます。
そのためには、標準線源に基づく効率校正、試料調製の統一、バックグラウンド管理、検出下限の明示、不確かさの評価、γ線スペクトルを含めた測定記録の保存が必要です。
食品測定は「測定器が数値を出すこと」ではなく、「誰が測っても比較できるBq/kgを出すこと」が求められる測定です。

報告例① Cs-137,Cs-134共に不検出
Cs-137:不検出、検出下限値 3.2 Bq/kg
Cs-134:不検出、検出下限値 3.0 Bq/kg
or
Cs-137:<3.2 Bq/kg
Cs-134:<3.0 Bq/kg

報告例② Cs-137のみ検出
Cs-137:12.4 ± 2.1 (3.2)  Bq/kg
Cs-134:不検出 <3.0


参考:市民測定室で稼働しているベクレルモニター装置構成例

2章では放射能測定において測定精度に影響を与える数々の要因とその対策法について記載します。
上記の中で出てくる用語等についても、第2章の本文の中でそれぞれ解説していきます。


内容;
1.測定目的と対象範囲の明確化
2. 測定環境の整備とバックグラウンド管理
3. 測定器の校正
4. 試料調製の標準化
5. 測定時間と検出下限の設計
6. スペクトル確認能力の訓練
7. 品質管理用試料による日常点検
8. 交差測定・相互比較の実施
9. 汚染防止と試料管理
10. 記録様式と報告書の標準化
11. 測定者教育と役割分担
12. 依頼者への説明訓練
13. 測定室の経営・運営 について


市民測定所を開設する際、測定精度を保持するために最も重要なのは、次の5点です。
第一に、測定条件を標準化すること。
   容器、重量、充填、測定時間、解析条件を毎回そろえる。

第二に、バックグラウンドを管理すること。
   一度測るだけでなく、日常的な変動を確認する。

第三に、校正と管理試料で測定器の状態を確認すること。
   ピーク位置、効率、計数率の変化を記録する。

第四に、スペクトルを読む訓練をすること。
   自動判定の数値だけに頼らず、異常に気づけるようにする。

第五に、測定結果の説明方法を統一すること。
   不検出、検出下限、不確かさ、参考値の意味を正しく伝える。



(村上)


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