市民測定室のつくりかた|現場ノート Vol.15 測定員の研修
ー福島原発事故の経験から測定員の技術向上がどのように行われていったかー
測定室を開設するためには、放射能測定の技術を持つ測定員を確保する必要があります。
ここでは、測定室へのアンケート調査の結果から、どのように放射能測定の技術を持つ測定員を確保・育成していったかの実例を紹介します。
・経験者が半数の測定室にいた
放射能測定は難しい思ってしまいますが、測定室へのアンケートの結果では、50%の測定室が内部に詳しい人がいたと回答しています。
具体的には、大学や専門機関で放射能測定の経験がある方、医療機器の設計者や、医療関係でX線等を扱った経験がある方などいた測定室が半数いました。
周りの人に話してみると、もしかすると身近に放射能測定の経験者がいるかもしれません。
・チェルノブイリ後から活動している測定室から支援
福島原発事故直後の時は、まずは行政機関、大学等の研究機関の測定が始まりました、チェルノブイリ後から測っているR-DANの方が空間線量を測ったりしていました。チェルノブイリの支援団体や海外の測定室(フランスのクリラットやアロカ)から被災地支援が行われ、被災地での測定活動から測定室開設支援が始まりました。初期の測定室開設では、海外の測定室や測定器販売業者からの技術指導が大きかったです。
・イベントで多くの人が集まり、そこからSNSを利用した情報交換の場が作られる
事故後早い時期に放射能問題に関するイベントが各地で行われ、本当に沢山の人々が集まりました。
イベントでは、食品放射能のデモ測定も行わるなど、放射能測定について具体的な技術交流やまた、測定室開設に向けた話合いが行われました。その後、イベントに集まった人たちが今後も測定室開設や測定技術向上のため交流していこうということで、メールやSNSを上での情報交換が始まりました。
・市民測定室での測定員養成が広がる
その後、各地で測定室開設が始まり、先行して開所した測定室に開設予定の測定員が出向き、実地で測定を体験しながら研修することで学んでいきました。また、測定室で独自に測定マニュアルを作り測定員養成を行た測定室もありました。
市民測定室が広がった背景にはこうした横の繋がりがあったことが大きいと思います。
実例紹介:
・放射能測定の経験者が中心になり早く開所し、測定ボランティア養成講座を行った測定室
名古屋の未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センターがあります。
東海ネットは1970年代に芦浜原発反対運動から始まって、反原発や産直運動をしていました。福島原発事故後に生協が放射能測定を行うことと一緒になり2011年8月から測定が始まりました、元愛知県の衛生研究所で30年以上放射能測定の経験がある大沼章子さんが、測定の中心になり、開所すぐに測定マニュアルを作り、測定ボランティア養成講座をはじめました。
・海外からの支援と測定器代理店から測定技術を学んだ測定室、その後、測定所グループで測定研修会を定期的に行った。
CRMS市民放射能測定所福島は、放射線の測定経験者はいませんでしたが、海外や測定器代理店などのから測定技術を学び、その後、定期的に測定研修会を開き測定員を増やしていきました。
測定岩田渉がフランスのクリラッドに支援を求めた、2011年5月にクリラッドから来日、空間線量測定や簡易式放射能測定器を持参くれ実地で測定、測定方法についても伝えた、8月にはフランスで測定の研修を行った。測定器も導入され、導入直後は測定器代理店から技術指導を受けた、その後、所内で研修を行ったり、主に福島県内で10ケ所の測定所をグループを作り、測定研修会を定期に行った。また、早く開所したため、見学や実地研修の受入れも多数行った。
・海外からの全面支援で設立した測定室
ちくりん舎(ちくりん舎ブログから抜粋)
2011年3月11日原発事故直後から、目の前で起こっている放射能被ばくを何とか抑えることはできないか、特に子ども妊婦を放射能被害から守れないか、ということが私たち、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)にとって大きな課題となりました。そんな中で、グリーンアクションのアイリーンさんの橋渡しで、米国の反核団体NIRS、フランスの市民放射能測定NGO-ACROとの連携体制が事故直後にできあがりました。
それ以来、ACROには土、水、野菜などの分析に加え、子どもたちの尿検査による内部被ばく調査で全面的に協力をいただきました。ACROはフランス国内で助成金・寄付を集め、ゲルマニウム半導体測定器を寄贈する計画も進めていました。私たちフクロウの会にそのゲルマニウム半導体測定器を寄贈するという知らせが届きました。それ以来、本当にいろいろな方々の助力があり、その運営を担うちくりん舎の2013年1月設立にいたりました。
2013年4月の1週間、ACROからミレーン研究所長とオリビエ氏が来日して、立ち上げ・校正とトレーニングを実施しました。
各サイズの容器で標準線源での校正。
システム全体の構成、機能や取扱の注意点のトレーニング。
福島から持ち帰ったコケや土を使っての測定実習。
シャットダウンのテスト。アナライザ復元時のチェックと校正方法の実習。
液体窒素切れのときの状況と復元(←これはトラブル対応で学んだことです)。
ACROのミレーン研究所長とオリビエさんが帰ってから、連休を挟んで、ちくりんの立ち上げで怒涛のような日々でした。
6人のボランティアスタッフで、測定トレーニング、誰でも仕事が同じようにできるように、ファイルの置き場や受付、測定記録用紙の整備、データ入力用のシステム整備などを進めました。
何とか、皆さん一人で仕事ができるようになり、だんだんおちついて来ました。
眼鏡なしで手探りで見ていたのが、はっきり見える眼鏡をかけたような感じ!ゲルマ測定器はすごいです。
2013年6月頃から一般の測定受付ができそうです。
2013年7月7日にちくりん舎にて、高木仁三郎市民科学基金による「放射能測定活動に関する『研究交流会』」が開催されました。この研究会は北は札幌から西は岡山まで、全国の市民測定所が参加する交流会です。2012年から、各測定所を会場にして開かれ、今回で4回目となります。今回は一般測定を公開して間もないちくりん舎を会場として、ちくりん舎のお披露目も兼ねて行われました。
(1)ちくりん舎の見学
ちくりん舎の見学会が行われました。参加者は総勢で30名ほどになり、ちくりん舎の建物は一杯になりました。
全国の市民測定所の方々、高木基金関係者のみなさんも、ゲルマニウム半導体測定器については直接触れる機会もあまりないようで、3人の説明者それぞれが質問ぜめで1時間があっという間にすぎました。
(2) 研究交流会
午後は、ちくりん舎の近くの公民館に会場を移して、研究交流会が行われました。参加者の自己紹介が行われましたが、さすがに4回目ともなると顔見知りも多く、スムーズに進みました。今回は、フランスのACROの理事長のディビッド・ボワイエ氏も来日しており、交流会に参加していただきました。
半数の測定室に、何らかの放射線測定の経験を持つ方がつながれていたことは意外かもしれません。
また、海外との連携が取れた測定室は、橋渡しをしてくれるキーパーソン(語学が堪能、人脈があるなど)の存在があったことが窺えます。