~9年目に入る3月11日によせて~

Photo by 中筋純 (C)suzy-j photographs


あれから8年が経過しました。

みんなのデータサイトは、当初全国に放射能測定室のネットワークを広げ、測定データを積み重ねることを大きな目標として2012年から活動をして来ました。
その結果、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」においては、3年半をかけて全国のべ4,000人の皆様のご協力のもと17都県3,400ヶ所の土壌を採取・測定し、東北から関東にかけて広がった放射能汚染の実態をマップにして表現し、お伝えするまでとなりました。

昨年11月には、皆様の「解説を読みたい!」という大きな声に押されて、『「図説」17都県放射能測定マップ+読み解き集』の発行に至り、3ヶ月で16,000部を発行するまでになりました。
もっと早くこのマップ集が欲しかった、これを早く知っていればというお声も多数頂き、私達もそのように出来ていたら・・・と思っているところですが、8年を経過した今、これ程までにこの本を待っていてくださる方がいたとは正直想像できてはおらず、データサイトメンバー一同、いまだ驚きをもってマップ集の対応に追われている日々です。
言葉を換えれば、今ここに至ってなお、東京電力福島第一原発事故が起こした、いいえ、現在進行形の放射能汚染とは何なのか、どのような事象であるのかを問い続けてくださる皆様が全国各地にこんなにいらっしゃったことに、深く思いを致します。またこれまでの活動が決して無駄なものではなかったのだと、こちらが勇気づけられています。

一方、被災者・避難者の皆様の状況は、「復興」という美名のもとに裏に追いやられ、健康被害が明らかになったり、家や土地を失い、家族の分断や、近隣とのコミュニティを失うなど、計り知れないその苦境に、多くの方がいまだ深い悩みや痛みを抱えて暮らしていらっしゃいます。特に、経済的な困窮は厳しく、母子家庭や介護中の方、新しい土地で仕事がみつからないなど、住宅補償の打ち切りに伴って「復興」とは程遠い「貧困問題」へとステージは移りつつあります。
そんな中、データサイトのマップ集には何が出来るのか。。。

この書籍は、市民の力で放射能汚染の実態を科学的に把握することを目的に土壌の採取・測定を行ない、自分たちで解析を試みてつくりました。
ご自分の住んでいる場所の値を知り安心したいと土壌採取に参加した方もいらっしゃいますし、少しでも汚染の少ない場所を知り引っ越したいと考える方、高汚染の場所であるのに何の補償も得られず泣き寝入りさせられている方は訴訟の材料にと、マップ集を様々に活用して頂いていることが、伝わって来ています。
家族の間で口論になったり、近隣の方との考えの違いからつらい思いをされた方もあったでしょう。
それぞれ皆様のご事情が違いますので、活用方法も様々になるのだと承知しております。

どうか、その埋められなかった溝を埋めることに何らかの形でこのマップ集が役立つことができればと考えております。今回の放射能被害で撒かれた分断の種がひとつでも摘み取られ、争いの矛先の向きを変えるきっかけになればと思います。
私達は今後、様々な場面でこの放射能被害の実態について、科学リテラシーを問われる場面が発生すると予測しています。そんな時、市民の叡智を詰め込んだこのマップ集をご活用頂ければ幸いです。

そして今年、皆様の新たな後押しにより「英語版・マップ集」の作成に着手し、世界の皆様に情報発信をしていくことを宣言し、9年目の誓いと致します。

写真:写真家 中筋純さん 
撮影日:2018年7月22日 福島市庭坂付近
(図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集 P.2-P.3「はじめに」に掲載させていただいている写真です)


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