新潟県魚沼市産 乾燥ドクダミから161ベクレル/kgを検出

2023年5月にみんなのデータサイト参加測定室 高木仁三郎記念ちょうふ市民放射能測定室 が依頼を受けて測定した「乾燥ドクダミ」が、161 ベクレル/kgでした。食品衛生法では、ドクダミ茶として飲む状態について一般食品の放射性物質の基準値100 ベクレル/kgを適用します。

産地は新潟県南魚沼市、自家用にと自分で乾燥させた「ドクダミ」です。生のドクダミの水分含量を文献値等からおおよそ90%とすると、乾燥前の採取したドクダミの放射性セシウム濃度が16 ベクレル/kgであることにも驚きです。事故から12年を経た2023年でも、しかも新潟県で、このような値が出ることがあることを知って欲しく、記事にしました。

新潟県南魚沼市とはどんなところなのか?

米どころである新潟県南魚沼市は、福島県や群馬県境と接する地域。2011年の事故当時、越後山脈を超えて一部のプルーム(放射能雲)が到達しており、これまでも山菜のコシアブラが200 ベクレル/kgを超えたケースが続出した地域(下図マップの概ね水色で囲んだあたり)です。

2014年から2017年にかけてみんなのデータサイトがのべ4000人の市民の皆さんとともに実施した「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」の成果である東日本ベクレル測定マップでみると、2011年3月(事故直後)に減衰補正計算した土壌放射性セシウム濃度は、右図のスケールを見ると1キログラムあたり200から800ベクレル、2023年の現在はおおよそ80から320ベクレルと考えられる地域です。


みんなのデータサイト 東日本土壌ベクレル測定マップ 2011年3月換算 セシウム134+セシウム137合算値のマップ)

お茶にしたらどうなる?

さて、食品衛生法の規格とは別に、この161ベクレルの乾燥ドクダミをそのまま食べるなら、100 ベクレル/kgを超えるので、基準値を超えるということになるし、販売すれば食品衛生法違反となります(販売等せず自家消費なら食品衛生法には問われませんが)。

ですが通常これはお茶として煎じて飲みます。
そういった食品の場合、実際に飲用する状態で測定してみることも必要です。

依頼者に、普段お茶を入れるときにどんなふうにしているのか確認したところ、1リットルのお湯に対して乾燥ドクダミは2つかみ程度、重さでいうと1グラム弱とのこと。

1回分に相当する2つかみ(1グラム弱)を1リットルの水で煮出して、普段飲用するくらいの濃度のドクダミ茶にして、800分測定したところ、検出限界 1.37ベクレル/kgで不検出でした。

とはいえ、これはゼロとはいえません。計算上は、仮に1グラムの乾燥ドクダミで1リットルのお茶をつくり、100%抽出されたとして、0.16ベクレルです。
毎日1リットル飲むと、毎日0.16ベクレルずつ放射性セシウムを摂取することになります。

毎日0.16ベクレルずつ飲むとどうなるか?

人間の体に取り込まれた放射性セシウムは、一部は体に残り、一部は尿や汗等で排出されます。体内半減期は個人差や年齢差がありますが、成人で70~90日程度、子供だと40日程度とされています(小児ではもっと短くなります)。
ICRPの資料によると、成人のケースで1日10ベクレルずつ摂取を続けると、800日後に摂取と排出がほぼ平衡に達して、体内放射能量は1500ベクレルに達します。一方、1000ベクレルの食品を1回だけ摂取した場合は、100日後には毎日10ベクレル摂取の曲線を下回り、800日後にはほぼゼロベクレルになっています。


0.16ベクレルずつだとしたら、単純に比率計算したところでは1年後には16ベクレル、800日後には24ベクレルということになるでしょうか・・微量を摂取した場合の資料がないので正確にはわかりません。

しかし放射性物質を摂取して体内にある間にその放射性元素が核崩壊すれば、γ線やβ線が出ることは間違いありませんし、半減期の長い放射性物質が取り込まれれば長期間被ばくする理屈は変わりません。

また放射性セシウムはカリウムと性質が似ているため、筋肉など、元々カリウムが多い場所により多く取り込まれるといわれています。

厚生労働省が定めている食品基準としては、お茶の状態で100Bq/kgですから、原材料の乾燥ドクダミそのものは基準値超え食品とはならず、これを飲むか飲まないかは個人の判断に委ねるしかないのです。健康に良いと思って飲んでいるものに放射能が入っていたらやはりショックではないでしょうか。

同様の土壌汚染の地域では同様の食品汚染の恐れも。測って確認しよう

南魚沼市はマップでオレンジ色や黄色の土壌汚染(200 Bq/kg〜800 Bq/kg程度)のエリアでした。 このマップを見て同様のレベルの土壌汚染が確認されている地域では、ひょっとすると同様にドクダミそのほかの野草・山菜類・野生のキノコ・ジビエ等に放射能汚染がある可能性があります。土壌汚染も地形や地質、気象条件、水の流れ等で濃淡があって、一概に全てが高いとも言えません。こうしたエリアで山に自生する植物やキノコを食用で利用する前には、事前に放射能を測ってみることが、知らず知らずに内部被ばくしてしまうことを防ぐためには大切です。



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