2021年の3.11 市民測定の記録

JCF Teamめとば 日本チェルノブイリ連帯基金事務局長 神谷さだ子

 2011年3月11日の大地震、翌12日地元紙の編集局から連絡が入った。原子力発電所が爆発した、と。

1991年から、チェルノブイリへの支援活動を続けてきたJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)にとって、ベラルーシへの渡航を100回近く重ねた私にとっては、その時から、身体の芯が震えているような恐怖感が続いた。

慌てた電話では、「風向きです。天気予報にも気をつけて、雨に打たれないようにお知らせしなくては」。 

JCFがチェルノブイリから学んだことは、まず、妊婦さんと子ども達を放射線から守ることだった。
外部被ばく・内部被ばく・心理的なストレスの軽減など。
緊急発進で福島県南相馬市とつながり、ガイガーカウンターやガラスバッジを付けていただき、外部被ばくを防護していただく取り組みを行った。
その流れで、内部被ばくを防ぐには、食品の放射能測定をしなければならない。

ベラルーシでは、各地域の保健局や市場に測定室があった。学校にも設置し、小学生が家から持ってきた自家製野菜を測定していた。
大惨事の中、JCFの活動を応援していただける方々からの寄付で測定器を購入した。
福島県や他のホットスポットで使っていただく案もあったが、ここ松本の事務所に設置したのは、流通の発達を鑑み、かつ、プルームは長野県にも流れてきていたからだ。
測定していきたい試料は、当時はいっぱいあった。そこで、測定器のオペレーターを担っていただく人を探し、物理学者であり、信州大名誉教授で全国の環境放射能測定も続けていた三輪浩先生に相談したところ、信州大学物理科の学生に声をかけられた。

こうして集まったのが、7人の勇士「Teamめとば」だった。測定の意義を何度も話し合い、具体的な目標を決めた。

 1. 土壌と食品の依頼測定・自主測定
 2. 学校給食測定
 3. 放射能の基礎知識を出前講座
 4. 全国の測定室と連携

こうして「チームめとば」としての活動が2012年2月に発足した。


「小学生が事務局を訪問」子ども達に講義しているのは神谷さんで、横にいるのは元チームめとばのメンバーです。


福島から避難して来たお母さんやお父さんが子ども達の食べる食材の放射能について測定所に相談に来るようになった。
「どのくらいの数値だったら食べて良いのか?」
「検出限界をゼロに近付けて欲しい」など相談を受ける事も度々あった。

めとばのメンバーは避難者の父兄や事務局スタッフと共に松本市側と話し合いを設け給食食材の測定がスタートした。
「笑顔の学校給食測定」とはメンバーが安心して給食を食べて欲しいと願い命名したプロジェクト名だ。
時には高校や小学校へ赴き放射能出前授業を行い大学生の立場で見えない放射能とは?放射能との付き合い方などを伝えた。その活動が大学に評価され2013年には信州大学同窓会連合会賞を頂いた。この賞は信州大学同窓会が、信州大学において活躍している団体および個人で課外活動の振興に功績があったことへの表彰で、過去にはバンクーバオリンピックで銀メダルを獲得した小平奈緒さんも受賞している。(2013年4月)
給食測定では過去に放射能が検出された事があった。どれも検出限界以下ではあったが、わずかでも放射能が検出された場合は食材を変えるという約束を交わしているため、それらは直前で別の食材に変更してもらう事が出来た。
これまで学校給食を含め9年間で2500あまりの測定資料を積み重ねている。


「Teamめとばの出前授業」


2021年の3.11 市民測定の記録