2021年の3.11 市民測定の記録

森の測定室 滑川 代表 根岸 主門

 森の測定室は、2012年秋にスタートした市民放射能測定室。

 母たちの、子どもたちを被ばくから守らなければ!!という思いから始まりました。専門的な知識を持って・・・というタイプの測定室ではなく、普通のお母さんたちがとにかく測らねば実態がわからない!!と始まった測定室です。放射能測定だけではなく、子育ての情報や芸術や勉強会などのイベント情報なども集まる、地域のハブ的なコミュニティスペースとしての役割も担ってきたと自負しています。たくさんの人が集まり、様々な情報をシェアし、あそこに行けば誰かと繋がれるかもしれない。そんな風に思える場所を目指してやってきました。

 様々な勉強会、映画の自主上映会、カフェスペース、講座、保育園の研修会などなど、たくさんのことにチャレンジしてきました。それでも、これまでを振り返ると、それらの活動も測定活動があってこそ、測定をするということに支えられて、ここまでやってこられたのだと思います。

 測るということは、見えない放射能を可視化するということ。放射能という見えない問題を、隠されようとしている問題を浮き彫りにするものです。時には、自分が作った野菜や生活に欠かせないものからセシウムが検出されるという厳しい結果が突きつけられることもあります。けれども、それが目の前にある現実で、その現実に向き合うことで初めて、問題解決に向かっていくことができるのだと思います。
行政(政府)が測らない、前提となる事実自体に目を向けない以上、自分たちでやるしかありません。日本は今、残念なのだけれど、そのような状況にあると思います。

 「何ベクレルなら食べていいと思いますか?」

 測定をしていると、よく聞かれます。国の食品基準は100ベクレルですが、放射能なんて入っていない方がいいに決まっています。それでも、その人の生活環境や暮らし方によって、個人個人の基準は違ってくるし、子どもと大人でも違うのかもしれません。全然気にしない人だっています。

 それぞれの基準をどこに置くのか。非常にセンシティブな問題です。人によって、放射能に対する許容範囲は違ってきます。
それでも、よく食べる野菜は何ベクレルなのか?そもそも3.11前は何ベクレルだったのか?考えるための判断材料として、測定するということが非常に大切なのだと思います。
それらがあって、はじめて個々に考えていけばいいと思います。そして、自分たちは、その判断材料を提示していく役割があると思うから、これからも測定活動を続けていかなければと思います。続けられる限り、続けたいと事故から10年経った今も強く思っています。

 今、森の測定室では、測定して、現在の放射能を可視化するだけでなく、起こるかもしれない次なる原発事故への備えの準備(=原子力防災を広める活動)もしています。原発から数十㎞の人たちだけが、もし事故が起きたらどうするか?と考えればいいのではないということは、3.11で痛感しました。放射能は原発から遠いここ埼玉にもやってくるし、そのときの天候によっては甚大な汚染被害を被ることになります。日本全国、どこでも“原発事故が起きたらどうするか?”ということについて考えておかねばならないと感じています。

 3.11の時に、原発からの放射能がやばい!逃げなければ!と思えた人はほんの一握りだったと思います。今はあの時よりもそう思える人が増えていると思います。それでも、まだまだそれは少数だと思います。もちろん、起きてはほしくないけど、原発がある以上、放射能が拡散されるような事故が起きる可能性は否定できません。事故が起きたときに、プルームが来るかも!?被ばくの可能性がある!とりあえず避難しておこう!!と判断ができる人を増やしていけるように、測定とともに原子力防災を広めていこうと活動しています。


2021年の3.11 市民測定の記録